補助金の対象経費とは?対象外になる典型例と判断の2軸

補助金の申請書を書いていて、「この費用は補助対象に入れていいのだろうか」で手が止まる方は少なくありません。対象経費の線引きは制度ごとに細かく違いますが、判断の出発点はどの制度でもほぼ共通しています。この記事では、対象経費を見分ける2つの軸と、多くの制度で対象外になりやすい経費の典型例、そして申請前にご自身で確認する手順を整理します。

目次

補助金の対象経費は「必要性」と「専用性」の2軸で判断する

結論から言えば、迷ったときに立ち返る問いは2つです。その費用は、補助事業をやり遂げるために本当に必要か(必要性)。そして、その補助事業のためだけに使うと言い切れるか(専用性)。この2つに自信を持って「はい」と答えられない費用は、対象外と判断される可能性が高くなります。

この考え方は、公募要領の書きぶりにもそのまま表れています。岐阜県の令和8年度「中小・小規模事業者パワーアップ応援補助金」の公募要領では、補助対象となる経費は次の3つの要件をすべて満たすものとされています。

要件公募要領の記載
①使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
②交付決定日以降に発生し対象期間中に支払が完了した経費
③証拠資料等によって支払金額が確認できる経費
出典:岐阜県商工会連合会「令和8年度中小・小規模事業者パワーアップ応援補助金 公募要領」(確認日 2026-07-27)

①がまさに「必要性」と「専用性」を問うている部分です。同じ公募要領では、「●●一式」「諸経費」「雑費」といった一括計上は、内訳や使途が不明瞭であるため①の要件を満たさないと判断される、とはっきり書かれています。金額の大小ではなく、使い道を1行で説明できるかどうかが分かれ目になります。

なお、対象経費は事業計画とセットで見られます。計画に書いていない取組みの費用は、そもそも必要性を説明できません。計画の組み立て方は補助金の事業計画書の書き方|審査で評価される4つの構成と3つのコツで解説しています。

どの制度でも対象外になりやすい経費|土地・建物、汎用パソコン、人件費

制度をまたいで見ていくと、対象外として列挙される経費にはよく似た顔ぶれが並びます。以下は、岐阜県の令和8年度パワーアップ応援補助金と、国のものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(23次締切分)の公募要領で、どちらにも対象外として記載があるものを中心にまとめたものです。

対象外になりやすい経費考え方
不動産の購入・取得費補助事業が終わっても資産として残り、事業目的との結びつきを保ちにくい
汎用パソコン、タブレット端末、プリンター、複合機など他の用途にも使えるため「専用性」を満たしにくい
役員報酬、自社の人件費、アルバイト代通常の事業活動として発生する費用と切り分けられない
事務所の家賃、敷金、光熱水費、電話代・インターネット利用料同上。補助事業がなくても発生する
文房具、用紙、インクなどの事務用品・消耗品同上
飲食費、接待費、娯楽費公的資金の用途として適当でないとされる
振込手数料、各種保険料、借入金の支払利息取組みそのものの費用ではない
自動車等の車両の購入費・修理費・車検費用汎用性が高く、目的外使用になり得る

ただし、この一覧は「多くの制度で対象外になりやすい」という傾向であって、すべての制度に当てはまる正解ではありません。たとえば汎用性の高いものについて、岐阜県のパワーアップ応援補助金はパソコン等を対象とならない経費例として明記しています。一方、ものづくり補助金の公募要領は「汎用性があり、目的外使用になり得るものの購入費(ただし、補助事業のみに使用することが明らかなものは除く)」と、例外の余地を残した書き方をしています。同じ論点でも、制度によって結論が変わり得るということです。

また、岐阜県のパワーアップ応援補助金は、自動車・フォークリフト・キッチンカー・除雪車などを名指しで対象外とする一方、ブルドーザーやパワーショベルのような「機械及び装置」区分に該当する自走式作業用機械設備は機械装置等費に計上できるとしています。「車だから全部だめ」ではなく、区分で切り分けられています。

中古品は条件つきで対象になる|相見積もりの数は制度ごとに違う

「補助金では中古品は使えない」と思われがちですが、そうとは限りません。多くの制度では、価格の妥当性を示せることを条件に、中古品も対象経費として認められます。問題になるのは中古であること自体ではなく、その値段が適正だと第三者に示せるかどうかです。

ここが、制度ごとの違いがはっきり出る場面です。

岐阜県 パワーアップ応援補助金(令和8年度)ものづくり補助金(23次締切分)
相見積もりの数2社以上の中古品販売事業者から3者以上の中古品流通事業者から
見積の要否の基準購入金額にかかわらず、すべて必要型式や年式が記載された同等品の相見積もりを取得している場合に対象
単価の制限購入単価50万円(税抜)未満のものに限る公募要領上、中古品固有の単価上限の記載なし
個人・オークションからの購入不可価格設定の適正性が明確でないものは対象外

見積を取る相手の数が「2社」と「3者」で違い、単価の考え方も異なります。他の制度で通った進め方が、今回の制度でもそのまま通るとは限りません。中古品の購入を検討している場合は、必ず今回の公募要領の該当箇所を開いて数字を確認してください。

あわせて、岐阜県のパワーアップ応援補助金では、随意契約による中古品の購入はいかなる場合も対象経費として認められないこと、購入した中古品の故障や不具合に係る修理費用も対象経費にならないことが明記されています。安く仕入れられても、後から直す費用は自己負担になるという前提で検討する必要があります。

なお、新品を買う場合の相見積もりの基準も制度ごとに違います。岐阜県のパワーアップ応援補助金は1取引あたり税込100万円超のときに2社以上、ものづくり補助金は単価50万円(税抜)以上の物件等について原則2者以上とされています。

消費税は原則として補助対象経費に含められない

ここで扱うのは、あくまで「消費税相当額を補助対象経費に含められるかどうか」という補助金制度上の話に限ります。仕訳の切り方や納税額の計算は税務の領域ですので、そちらは顧問の税理士にご相談ください。

制度上の結論はシンプルで、多くの制度では消費税・地方消費税は公租公課として補助対象外です。岐阜県の令和8年度パワーアップ応援補助金の公募要領でも、対象とならない経費に「公租公課(消費税・地方消費税)」が挙げられています(旅費に係る出入国税は対象)。ものづくり補助金の公募要領も「補助金交付申請額の算定段階において、消費税等は補助対象経費から除外して算定してください」としています。

ただし例外もあります。岐阜県のパワーアップ応援補助金では、消費税等を補助対象経費に含めて補助金交付申請額を申請し、その内容で交付決定を受けた「免税事業者・簡易課税事業者の単独申請者」は対象外の扱いから除かれると定められています。自社がこの例外に当たるかどうかは、事業者ごとの課税区分によって変わります。判断に迷う場合は、税理士と補助金の相談窓口の双方に確認するのが安全です。

実務上、いちばん影響が出るのは見積書の読み方です。税込表示の見積をそのまま経費表に転記すると、補助率をかける前の金額がずれます。補助金の計算は税抜で組むのが基本、と覚えておくと計画段階で迷いません。

発注のタイミングを誤ると、その経費は対象外になる

金額でも区分でもなく、順番で経費が落ちてしまう典型例がこれです。多くの制度では、交付決定通知書を受け取る前に行った発注・契約・購入・支払いは補助対象になりません。

岐阜県のパワーアップ応援補助金の公募要領は、補助対象となる経費の発注・契約・支出行為は「補助金交付決定通知書」の受領後から可能になるとしたうえで、到着前の発注・契約・支出行為は補助対象外になると注意喚起しています。ものづくり補助金の公募要領はさらに強く、「交付決定日よりも前に発注・契約・購入を行った経費はいかなる理由があっても補助対象外となります」と書いています。

注意したいのは、採択と交付決定は別だということです。採択の連絡が届いても、そこからさらに交付決定の手続きがあります。「採択されたから、もう買っていい」と早合点すると、いちばん高い設備が丸ごと対象外になりかねません。採択から入金までの段取りは補助金は採択後が本番|入金までの流れで整理しています。

一方で、動いてよいこともあります。岐阜県のパワーアップ応援補助金の公募要領では、見積の取得は交付決定前でも構わないと明記されています。また展示会等への出展については、申込みだけは交付決定前でも対象になり得るとされています(ただし請求書の発行が交付決定日以後であることが必要)。禁じられているのは発注・契約・購入・支払いであって、情報を集めて準備することではありません。

発注の順番は、公募要領に書いてあるとおりなのですが、日々の商売の感覚とはずれるところです。「交付決定通知書が届くまでは注文書を出さない」と社内で決めておくくらいが安全です。

岐阜県の補助金には「県外の経費は対象外」という縛りがある

ここまでは制度に共通する話でしたが、都道府県や市町村の補助金には、国の制度にはない地理的な縛りが入ることがあります。岐阜県の令和8年度パワーアップ応援補助金は、その分かりやすい例です。

同補助金の公募要領は、補助対象として認められない経費のひとつに「岐阜県外の店舗等に係る経費」を挙げ、設置場所が県外である機械等の購入費や、県外の店舗改装等の工事費は補助対象とならないと明記しています。会社の所在地ではなく、モノを置く場所・工事をする場所で判断されるという点がポイントです。

岐阜県と愛知県の県境をまたいで店舗を持っている事業者や、本社は岐阜市でも工場が県外にあるといったケースでは、同じ設備投資でも設置場所によって扱いが変わります。複数拠点をお持ちの場合は、経費表を作る前に「どこに置くか」を確定させておくと手戻りがありません。

もうひとつ、この公募要領には全国向けの解説記事ではあまり見かけない具体的な線引きが載っています。建物の増築や小規模な物置の設置について、補助対象外である「不動産の取得」に該当するかどうかを、次の3要件で判断すると示している点です。

  • 外気分断性:屋根および周壁またはこれに類するものを有し、独立して風雨をしのげること。支柱と屋根材だけの戸外テラス席やカーポートは、周壁がないため該当しない
  • 土地への定着性:基礎等で物理的に土地に固着していること。コンクリートブロックの上に市販の簡易物置を乗せただけの状態は該当しない
  • 用途性:家屋本来の目的(居住・作業・貯蔵等)を有し、その用途に供しうる利用空間が形成されていること

3つすべてを満たすと「不動産の取得」に当たり対象外、という整理です。飲食店のテラス席の設置を考えている、といった具体的な相談では、この3要件が判断の物差しになります。

支払い方法にも制限があります。同補助金では支払いは銀行振込が原則とされ、旅費や代金引換限定のサービス等を除き、1取引10万円超(税抜)の現金支払いは補助対象外です。小切手・手形による支払いや、売掛金と買掛金の相殺による決済も認められていません。制度の全体像は岐阜県パワーアップ応援補助金|枠と上限額の全体像でまとめています。

経費区分は制度ごとに違う|今回の公募要領で確認する3つの手順

最後に、実際に経費表を作るときの確認手順を3つに整理します。

手順1:経費区分の一覧を開き、自社の費用を当てはめる。区分の名前も中身も制度ごとに違います。岐阜県のパワーアップ応援補助金は①機械装置等費、②広報費、③展示会等出展費、④旅費、⑤開発費、⑥借料、⑦委託・外注費、⑧職場環境整備費(働いてもらい方改革枠に限る)の8区分。ものづくり補助金は機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費などの構成で、区分ごとに上限割合が設定されています。どの区分にも当てはまらない費用は、その時点で対象外です。

手順2:「対象とならない経費例」を先に読む。多くの公募要領は、区分ごとに対象となる例と対象とならない例を併記しています。対象例から読むと自社の費用を無理に当てはめたくなりますが、対象外の例から読むと落とし穴に先に気づけます。

手順3:単価50万円(税抜)以上になるものを洗い出す。この金額を超える機械装置等の購入やウェブサイトの作成、店舗改装工事などは、多くの制度で「処分制限財産」に該当します。補助金を受け取った後も一定期間(岐阜県のパワーアップ応援補助金では通常は取得日から5年間)、目的外使用・譲渡・担保提供・廃棄が制限され、処分するには事前の承認が必要です。詳しくは補助金で買った設備は売れる?財産処分の確認手順をご覧ください。

加えて、他の補助金との重複にも注意が必要です。岐阜県のパワーアップ応援補助金では、同一の内容について国または岐阜県が補助する他の制度と重複する事業は補助対象とならないと定められています。複数の制度を検討している場合の考え方は補助金は併用できる?二重受給を避ける確認手順で解説しています。

よくあるご質問

見積書はいつ取ればよいですか

岐阜県の令和8年度パワーアップ応援補助金の公募要領では、「見積の取得は交付決定前でも構いません」と明記されています。対象外になるのは発注・契約・購入・支払いであって、見積を取る行為そのものではありません。むしろ早めに複数社から見積を集めておくと、採択後の手続きがスムーズです。ただし扱いは制度により異なる可能性がありますので、今回の公募要領でご確認ください。

自社の従業員が作業した分を人件費として計上できますか

多くの制度で対象外です。岐阜県の令和8年度パワーアップ応援補助金では、対象とならない経費に「役員報酬、直接人件費」および「雑役務費(アルバイト代等の人件費、派遣労働者の派遣料、交通費として支払われる経費等)」が列挙されています。ものづくり補助金でも「事業に係る自社の人件費」が対象外とされています。外部の事業者に委託・外注した費用であれば、区分と条件に応じて対象になり得ます。

パソコンはどの制度でも対象外ですか

用途と枠によって結論が変わります。岐阜県の令和8年度パワーアップ応援補助金では、パソコンやタブレット端末は「汎用性が高く目的外使用になりえるもの」として、機械装置等費の対象とならない経費例に挙げられています。一方で、同じ補助金の働いてもらい方改革枠にある職場環境整備費では、「子育て中の男女が子の看護を要する場合等に在宅勤務を実施するためのパソコン導入」が対象となる経費例に挙げられています。同一の制度の中でも枠と目的によって扱いが分かれますので、今回の公募要領の該当区分をご確認ください。

まとめ

  • 迷ったら「必要性」と「専用性」の2軸に戻る。使い道を1行で説明できない費用は落ちやすい
  • 不動産、汎用パソコン、自社の人件費、家賃・通信費・消耗品は、多くの制度で対象外
  • 中古品は条件つきで対象。ただし相見積もりの数(2社か3者か)や単価の制限は制度ごとに違う
  • 消費税は原則として対象経費に含められない。免税事業者等の例外の有無は公募要領で確認する
  • 交付決定通知書が届く前の発注・契約・購入・支払いは対象外。採択と交付決定は別
  • 岐阜県の補助金では、県外に設置する機械や県外店舗の工事費が対象外になることがある
  • 単価50万円(税抜)以上のものは処分制限財産になり、事業終了後も処分に制限がかかる

対象経費の判断は、公募要領を丁寧に読めば多くが解決します。とはいえ、自社の費用がどの区分に当たるのか、この進め方で大丈夫かという段階でお困りでしたら、遠慮なくご相談ください。初回相談は無料です。岐阜県・愛知県を中心に、補助金申請のご相談を承っています。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案への適用を保証するものではありません。制度の内容は改正される場合があります。

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