「後継者がいない。会社をどうするか、そろそろ考えないといけない」。第三者への引継ぎ(M&A)を検討し始めると、まず専門事業者へ支払う着手金という費用の壁が出てきます。
岐阜市には、この初期費用の2分の1・上限50万円を補助する独自の制度があります。令和8年度分の受付はすでに終了していますが、この制度は「先に金融機関などの支援を受けていること」が条件のため、次に備えるなら今から動く必要があります。要件と準備の順番を整理します。
まず現在の受付状況|令和8年度は終了しています
岐阜市の公式ページでは、令和8年度の受付を終了した旨が案内されています(2026年7月27日確認)。令和8年度の申請期間は令和8年4月1日から令和9年2月26日までとされていました。
岐阜市は「申込期限前であっても、申請額の合計が予算額に達した場合は受付を終了する」としており、補助予定件数が3件程度と限られていることから、期間の途中で枠が埋まったものと考えられます。
ここがこの制度の最大の注意点です。年度末まで受付期間があると書かれていても、件数の枠が埋まればそこで終わります。次年度以降の実施が公表された場合は、年度のはじめに動けるよう準備しておくことが現実的な対策になります。
制度の概要|上限50万円・補助率2分の1
岐阜市事業承継サポート補助金は、M&Aによる事業承継を進めるときに、専門事業者へ支払う着手金の一部を岐阜市が補助する制度です。国の事業承継・M&A補助金とは別に、岐阜市が独自に設けています。
| 補助上限額 | 50万円 |
| 補助率 | 補助対象経費の2分の1以内 |
| 補助予定件数 | 3件程度(予算の範囲内で決定) |
| 令和8年度の申請期間 | 令和8年4月1日〜令和9年2月26日 ※受付終了済み |
| 申請先 | 岐阜市 経済部 商工課 工業振興係 |
| 電話 | 058-214-2359 |
対象になる事業者の4つの条件
公表されている要件は次のとおりです。3つ目が実務上いちばん重い条件なので、後で詳しく説明します。
- 岐阜市で事業を営む中小企業者のうち、市内に本店または住所を有すること
- 後継者が不在の中小企業者であること
- 市内の金融機関や公的機関の支援を受けた上で、M&Aによる事業承継を実施すること
- 市税を滞納しておらず、事業承継について他の公的な補助金等を受けていないこと
4つ目の条件は「事業承継について」という限定がついています。事業承継と関係のない補助金(設備投資や販路開拓のものなど)を使っていることが、そのまま失格になるわけではありません。
ただし同じ費用に複数の補助金を重ねることはできないため、対象経費の切り分けは必要です。補助金の重複については補助金は併用できる?二重受給を避ける確認手順もあわせてご覧ください。
最大の関門は「M&A支援証明書」|相談の順番を間違えない
必要書類のひとつにM&A支援証明書があります。これは支援を行う金融機関または公的機関が発行するものです。
つまりこの補助金は、自分でM&A仲介会社を見つけて契約しただけでは申請できません。取引のある金融機関や、事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関が関与していることが前提になっています。
そのため、動く順番は次のようになります。
- 後継者不在という前提で、まず取引金融機関または事業承継・引継ぎ支援センターに相談する
- その支援のもとでM&A専門事業者を選び、着手金の見積りを受け取る
- 支援機関からM&A支援証明書を発行してもらう
- 岐阜市商工課へ相談し、補助の対象になるかを確認する
- 必要書類を揃えて申請する
- 交付決定を受けてから、事業に着手する
広告などをきっかけにM&A仲介会社へ直接相談し、その場で契約まで進んでしまうと、この補助金は使えなくなる可能性が高くなります。順番を逆にしないことが、この制度を使えるかどうかの分かれ目です。
また、交付決定日より前に事業に着手することは認められていません。着手金は話が動き出すと支払いも早くなりがちですが、支払いのタイミングは事前に市へ確認してください。
対象になる経費と、必要書類
対象経費
補助の対象になるのは、M&A専門事業者へ支払う着手金のうち、次の費用です。
- 初期診断料
- 課題分析費
- 企業評価費
- 企業概要書作成費
- コンサルティング料
- 事業承継計画作成費
並べてみると分かるとおり、対象になっているのはM&Aの「入口」にあたる費用です。自社の状態を調べ、いくらの価値があるかを評価し、相手に見せる資料をつくるところまで。相手が見つかるかどうかに関わらず発生する費用で、承継をためらう理由になりやすい部分でもあります。
逆にいえば、成約したときに支払う成功報酬は、この一覧に入っていません。専門事業者から見積りを受け取ったら、どの費目が着手金にあたるのかを確認しておくと、申請できる金額が見えてきます。
申請時の書類
申請時に必要とされている書類は次の7点です。
- 補助金等交付申請書
- 事業計画書
- 収支予算書
- M&A支援証明書(支援を行う金融機関または公的機関が発行したもの)
- 補助対象経費に係る見積書の写し
- 相手方登録申請書
- 処分通知等のオンライン受取希望届出書
受給後の報告
補助金を受け取った後にも作業が残ります。事業が終わったら実績報告書・事業実績書・収支決算書に、専門事業者との委託契約書の写しと領収書の写しを添えて提出し、そこで補助金額が確定します。
さらに、事業完了後3年間(M&Aの最終合意契約を締結するまで)は、M&Aの進捗状況を市へ報告する必要があります。申請して終わりではない点は、あらかじめ見込んでおいてください。
このうち事業計画書と収支予算書は、様式に沿って自分で作る書類です。M&Aの検討状況と、着手金の内訳を整理して書く必要があるため、見積りを受け取った段階から準備を始めると余裕をもって進められます。令和8年度は、商工課への書類提出のほかオンライン申請も利用できました。
相談先の使い分け
| 相談したいこと | 相談先 |
|---|---|
| そもそも誰に引き継ぐか、公的な立場で相談したい | 事業承継・引継ぎ支援センター、取引金融機関 |
| 実際の相手探し、企業評価、交渉 | M&A専門事業者 |
| 補助金の対象になるか、申請書類のこと | 岐阜市商工課/行政書士 |
当事務所がお手伝いするのは、このうち補助金の申請部分です。M&Aの仲介や相手探し、企業価値の評価は専門事業者や金融機関の領域になりますので、そちらと並行して進めていただく形になります。国の制度では小規模事業者持続化補助金のように、承継後の販路開拓に使えるものもあります。
よくあるご質問
親族に引き継ぐ場合も使えますか?
この補助金は後継者が不在の中小企業者を対象とし、対象経費もM&A専門事業者へ支払う着手金とされています。そのため、親族内で承継する場合は想定されていません。
親族内承継には別の支援制度がありますので、どの方法で承継するかを決めた段階でご相談ください。
相手が見つからず、M&Aが成立しなかった場合はどうなりますか?
対象になっているのは初期診断料や企業評価費といった着手段階の費用で、成約したときの成功報酬は含まれていません。
成立しなかった場合の取り扱いは市の要綱によりますので、申請前に商工課へ確認してください。
市外に本店がありますが、岐阜市内に工場があります。対象になりますか?
対象は「市内に本店または住所を有する方」とされています。法人の場合は登記上の本店が岐阜市内にあることが前提となるため、工場や事業所だけが市内にあるケースは、原則として要件を満たさないと考えられます。
個別の事情がある場合は商工課へご確認ください。
まとめ|次年度に備えるなら、金融機関への相談から
- 岐阜市独自の制度で、M&Aの着手金の2分の1・上限50万円を補助。補助予定は3件程度
- 令和8年度の受付は終了済み。次年度の実施が公表されたら、年度のはじめに動けるかが分かれ目
- 対象は岐阜市内に本店または住所がある中小企業者で、後継者が不在であること
- 市内の金融機関や公的機関の支援を受けていることが前提。M&A支援証明書が必要書類に含まれる
- 交付決定より前に事業に着手することは認められない
- 受給後も、事業完了から3年間はM&Aの進捗報告が必要
事業承継は、決めてから動き出すまでに時間がかかります。そして、この補助金のように「相談の順番」で使えるかどうかが決まる制度もあります。「まだ決めていないが、選択肢を知っておきたい」という段階のご相談で構いません。使える制度と必要な準備を整理してお伝えします。初回相談は無料です。
出典・参考
- 岐阜市「岐阜市事業承継サポート補助金」(確認日:2026年7月27日)
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案への適用を保証するものではありません。制度の内容は改正される場合があります。申請の際は必ず岐阜市の公式ページで最新の要綱をご確認ください。
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