岐阜県には、国の小規模事業者持続化補助金とは別枠で使える県独自の補助金があります。「中小・小規模事業者パワーアップ応援補助金」です。小規模事業者で上限150万円から300万円、中小企業者で上限500万円という規模の制度ですが、県外向けの解説では中身まで踏み込まれることが多くありません。この記事では令和8年度の実績をもとに、枠ごとの上限額と補助率、対象者の判定、相談先の使い分けを整理します。
【はじめにご確認ください】令和8年度の公募は、2026年4月7日に受付を開始し、2026年5月15日17時で受付を終了しています。採択事業者も2026年7月10日に公表済みです。したがって本記事は、いま申請できる制度としてではなく、次の公募に向けて制度の全体像をつかんでいただくための解説です。次回の公募の有無・時期・内容は、本記事の執筆時点(2026年7月27日)では公表されていません。
岐阜県パワーアップ応援補助金とは|国の持続化補助金とは別枠の県独自制度
正式名称は「中小・小規模事業者パワーアップ応援補助金」で、公募要領には「岐阜県小規模事業者持続化補助金」という副題が併記されています。名前のとおり、国の小規模事業者持続化補助金の岐阜県版という位置づけですが、あくまで別の制度です。実施主体は岐阜県で、事務局は岐阜県商工会連合会持続化補助金事務局が務めています。
制度の狙いは、原材料費やエネルギーコストの高騰、慢性的な人手不足、価格転嫁が進まない中での賃上げといった環境の中で、持続的な賃上げにもつながる「稼ぐ力」の強化に取り組む事業者を支援することです。公募要領では「稼ぐ力」の強化を「事業規模拡大等により、売り上げ・利益の増加を図る取組み」と定義しています。財源には国の「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」が活用されています。
対象になるのは、県内に主たる事務所を有する中小企業者および小規模事業者です。ここで見落とされがちですが、令和8年度の公募要領には「商工会・商工会議所の会員、非会員を問わず応募可能です」と明記されています。会員でなければ使えない制度ではありません。
国の制度をご存じない方は、先に小規模事業者持続化補助金とは?上限額・対象者・申請の流れを解説をご覧いただくと、県の制度との違いがつかみやすくなります。
枠ごとの補助上限額と補助率|令和8年度の実績
令和8年度は、事業者の規模と申請区分の組み合わせで3つのパターンがありました。以下はいずれも令和8年度の実績であり、次年度に同じ内容で実施されるとは限りません。
| 事業者規模 | 申請区分 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|
| 小規模事業者 | 一般枠 | 2分の1以内 | 150万円 |
| 小規模事業者 | 働いてもらい方改革枠 | 3分の2以内 | 300万円 |
| 中小企業者 | 働いてもらい方改革枠 | 2分の1以内 | 500万円 |
小規模事業者の働いてもらい方改革枠については、上限300万円のうち「新たな働く環境づくり」に要する経費は100万円を上限に補助率10分の10が適用されます。この点は後述します。
金額の感覚をつかむために、公募要領に載っている計算の考え方を挙げます。小規模事業者の一般枠で補助対象経費が300万円なら、その2分の1の150万円が補助されます。補助対象経費が800万円になると2分の1は400万円ですが、小規模事業者は上限の150万円まで、中小企業者は400万円が補助額になります。補助率をかけた額と上限額の、低いほうが上限になるという読み方です。
運用面で押さえておきたい点が3つあります。
- 申請できる枠は1つだけ。申請後に枠を変更することはできません。一般枠から働いてもらい方改革枠への変更も、その逆も認められていません
- 同一事業者からの申請は1件。複数の屋号を使っている個人事業主でも、応募は1件のみです
- 中小企業者が対象に加わったのは令和8年度から。公募要領には、県内における「働いてもらい方改革」の普及・浸透を図ることを目的に「今年度から補助対象とし」たと記載されています
自社は小規模事業者か中小企業者か|従業員数で決まる
上限額が150万円なのか500万円なのかは、自社がどちらに分類されるかで決まります。判定は「常時使用する従業員の数」「資本金の額又は出資の総額」「主たる事業の種類」で行われます。
| 業種 | 小規模事業者(従業員数) | 中小企業者(資本金または従業員数のいずれかを満たせばよい) |
|---|---|---|
| 小売業 | 5人以下 | 資本金5千万円以下 / 従業員6人以上50人以下 |
| サービス産業 | 5人以下 | 資本金5千万円以下 / 従業員6人以上100人以下 |
| 卸売業 | 5人以下 | 資本金1億円以下 / 従業員6人以上100人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 | 資本金3億円以下 / 従業員21人以上300人以下 |
業種は日本標準産業分類ではなく、現に行っている事業の業態から判断される点にご注意ください。「自社で流通性のあるモノを生産する事業」「他者が生産したモノに加工を施して価値を付与する事業」は製造業その他に分類されます。
従業員数の数え方にも決まりがあります。次の方は「常時使用する従業員数」に含めません。
- 会社役員(ただし、従業員との兼務役員は含まれます)
- 個人事業主本人および同居の親族従業員
- 申請時点で育児休業中・介護休業中・傷病休業中または休職中の社員
また、発行済株式の2分の1以上を同一の大企業が所有しているなど、いわゆる「みなし大企業」に該当する事業者は対象外です。事業形態としては、医師・歯科医師・助産師、系統出荷による収入のみである個人農業者、一般社団法人・公益社団法人、医療法人、学校法人、社会福祉法人、任意団体などが対象になりません。申請時点で開業していない創業予定者も対象外で、開業届を提出済みでも開業日が申請日より後であれば対象になりません。
「新たな働く環境づくり」は補助率10分の10|上限100万円の考え方
この制度でいちばん特徴的なのが、小規模事業者の働いてもらい方改革枠に設けられた補助率10分の10の部分です。上限300万円のうち100万円を上限として、「新たな働く環境づくり」に要する経費には自己負担なしの補助率が適用されます(中小企業者の働いてもらい方改革枠は10分の10の適用外です)。
「新たな働く環境づくり」とは、子育て中の男女、高齢者、障がいのある方などが働きやすい環境を整備することを目的に、マイクロワーク(超時短勤務)、フレックスタイム、ワークシェアリング、多能工化などを導入する取組みを指します。公募要領では、業務を細分化して短時間の就労を可能にする取組みや、事務業務を切り出しての在宅勤務の導入などが例示されています。
金額の組み立て方は、公募要領の計算例が分かりやすいので引用します。「新たな働く環境づくり」に要する経費(A)が80万円、「稼ぐ力」の強化に要する経費(B)が150万円の場合、(A)は80万円×10/10で80万円、(B)は150万円×2/3で100万円となり、申請額は合計180万円です。
ただし、使い勝手のよさに目を奪われる前に、条件を押さえておく必要があります。
- 「稼ぐ力」の強化が大前提。職場環境改善のみの事業は認められません。経費の比重が職場環境改善に偏っている場合は、評価点を下げる措置が講じられると明記されています
- 成果はすべて公表対象。働いてもらい方改革枠で採択された事業は、岐阜県および県商工会連合会のホームページでの掲載が予定されています
- 従業員がいない場合も申請できる。ただし実績報告の際に、求人に着手したこと(ハローワークや民間求人広告への掲載、自社サイトやSNSでの募集、店舗での求人チラシの掲示など)が確認できる証ひょう書類の提出が必要です
- 費用をかけない取組みも該当する。公募要領のQ&Aでは、費用を要しない就業規則の制定や勤務制度の導入も「新たな働く環境づくり」に該当するとされています
- 対象外と明示された例もある。喫煙所の設置、従業員宿舎の建設または改修は、公募要領のQ&Aで対象にならないと回答されています
対象経費は8区分|岐阜県外の店舗にかかる経費は対象外
令和8年度の対象経費は次の8区分でした。一般枠は①から⑦まで、働いてもらい方改革枠は①から⑧までが使えます。
- ①機械装置等費 ②広報費 ③展示会等出展費 ④旅費
- ⑤開発費 ⑥借料 ⑦委託・外注費
- ⑧職場環境整備費(働いてもらい方改革枠に限る)
県の補助金ならではの注意点として、対象とならない経費に「岐阜県外の店舗等に係る経費」が挙げられています。設置場所が県外である機械等の購入費や、県外の店舗改装等の工事費は補助対象になりません。会社の所在地ではなく、モノを置く場所・工事をする場所で判断されるため、県境をまたいで拠点を持つ事業者は経費表を作る前に確認が必要です。
そのほか、実務で引っかかりやすいのは次の点です。
- 「補助金交付決定通知書」の受領前に行った発注・契約・支出は補助対象外
- 支払いは銀行振込が原則。旅費や代金引換限定のサービス等を除き、1取引10万円超(税抜)の現金支払いは対象外。小切手・手形・相殺による決済も不可
- 公租公課(消費税・地方消費税)は原則として補助対象外
- 単価50万円(税抜)以上の機械装置等の購入やウェブサイトの作成、50万円以上の外注工事は「処分制限財産」に該当し、補助金を受け取った後も一定期間は処分に承認が必要
経費の判断軸そのものについては補助金の対象経費とは?対象外になる典型例と判断の2軸で詳しく整理しています。また、同一内容の事業について国または岐阜県が補助する他の制度と重複することはできません。複数制度を検討する際の考え方は補助金は併用できる?二重受給を避ける確認手順をご覧ください。
相談先は商工会・商工会議所|岐阜県の担当課との使い分け
この補助金は、商工会・商工会議所を経由してしか申請できません。令和8年度の流れは次のとおりでした。
- 最寄りの商工会・商工会議所に相談する
- 支援担当者の伴走支援(助言・指導)を受けながら応募書類を作成する
- 書面と電子データを、締切までに商工会・商工会議所へ提出する
- 商工会・商工会議所から持続化補助金事務局へ送付され、外部審査員が審査する
ここで重要なのは、伴走支援が「受けてもよいサービス」ではなく補助対象事業の要件そのものだという点です。公募要領は、補助対象事業の条件として「商工会・商工会議所の伴走支援を受けながら取り組む事業であること」を挙げています。書類だけ自分で作って持ち込む、という進め方は想定されていません。
そして令和8年度の公募要領は、伴走支援には数日から数週間を要する場合があるため早めに相談するよう、冒頭で二度にわたって注意喚起しています。締切の1週間前に駆け込んでも、支援担当者の受付状況によっては十分な支援を受けられないおそれがある、ということです。次回に向けて動くのであれば、公募が始まってからではなく、その前から関係をつくっておくのが現実的です。
窓口の使い分けは、次のように整理すると分かりやすくなります。
| 聞きたいこと | 相談先 |
|---|---|
| 自社の取組みが対象になるか、書類の書き方、提出の段取り、経費の当てはめ | 最寄りの商工会・商工会議所(申請の実務はすべてここが窓口) |
| 制度そのものの位置づけ、県の方針、次年度の実施予定 | 岐阜県 商工労働政策課 団体支援係(058-272-8386) |
採択後のスケジュールにも触れておきます。令和8年度の事業実施期間は交付決定日から2026年12月31日までで、補助事業が完了したときは、その日から30日を経過した日または2027年1月8日のいずれか早い日までに実績報告書等を提出する必要がありました。そしてこの補助金は精算払いで、概算払いは一切認められていません。いったん自社で支払い、実績報告と額の確定を経てから入金されるため、資金の手当てを見込んでおく必要があります。この流れは補助金は採択後が本番|入金までの流れで詳しく解説しています。
国・県・市の3層で見る岐阜県の補助金|次回に向けて今から準備できること
岐阜県内の事業者が使える補助金は、国・県・市の3層で重なっています。この記事のパワーアップ応援補助金は、ちょうど真ん中の層にあたります。
| 層 | 制度の例 | 対象の範囲 |
|---|---|---|
| 国 | 小規模事業者持続化補助金 | 全国の小規模事業者 |
| 県 | 中小・小規模事業者パワーアップ応援補助金(本記事) | 岐阜県内に主たる事務所を有する中小企業者・小規模事業者 |
| 市 | 岐阜市中小企業等DX推進補助金/岐阜市の見本市等出展補助金 | 岐阜市内の事業者 |
この3層は、上に行くほど対象が広く倍率も高くなり、下に行くほど対象は狭いものの地元事業者にとっては手が届きやすい、という関係にあります。同一内容の事業で重複して受け取ることはできませんが、取組みの中身が別であれば、層をまたいで活用できる可能性があります。たとえば県の補助金で店舗の設備投資を、市の補助金で展示会出展を、というように取組みごとに切り分けて考えるのが基本です。判断に迷う場合は、どちらの事務局にも事前に確認するよう公募要領が求めています。
次回の公募に備えて、いまから着手できることを挙げます。制度の内容が変わっても、下の準備はほとんど無駄になりません。
- 商工会・商工会議所に相談を始める。会員・非会員を問わず相談できます。伴走支援には時間がかかるため、公募開始を待つ理由はありません
- 経営計画を先に作っておく。「稼ぐ力」の強化として何に取り組み、それがどう売上・利益につながるかを言葉にしておけば、制度が変わっても骨格は使えます
- 自社の区分を確定させる。業種・従業員数・資本金を確認し、小規模事業者か中小企業者かを整理しておくと、上限額の見込みが立ちます
- 設備の見積を集めておく。対象外になるのは発注・契約・購入・支払いであって、見積の取得ではありません
- 働き方の見直しを検討しておく。短時間勤務や在宅勤務の導入を考えているなら、10分の10の枠が使える可能性があります
- 資金繰りを見込む。精算払いのため、いったんは自社で支出します
よくあるご質問
商工会・商工会議所の会員でないと申請できませんか
令和8年度の公募要領には「商工会・商工会議所の会員、非会員を問わず応募可能です」と明記されています。ただし申請は商工会・商工会議所を経由し、伴走支援を受けながら取り組むことが補助対象事業の要件とされているため、非会員であっても最寄りの商工会・商工会議所への相談は必要です。
国の小規模事業者持続化補助金と両方使えますか
同一内容の事業では使えません。令和8年度の公募要領では、国または岐阜県が補助する他の制度と同一または類似内容の事業は補助対象とならないとされています。取組みの中身が明確に別であれば、それぞれで検討する余地はあります。他の補助金を受給中または受給予定の場合は、双方の事務局にあらかじめ確認してください。
次回の公募はいつですか
本記事の執筆時点(2026年7月27日)では、次年度の公募の有無・時期・内容はいずれも公表されていません。令和8年度は2026年4月7日受付開始、2026年5月15日17時締切という日程でしたが、この日程が次年度も同じとは限りません。年度によって枠や上限額が変わることもありますので、最新の情報は岐阜県および岐阜県商工会連合会の公式サイトでご確認ください。
まとめ
- 「中小・小規模事業者パワーアップ応援補助金」は、国の持続化補助金とは別枠の岐阜県独自の制度
- 令和8年度の実績は、小規模事業者の一般枠が上限150万円・補助率2分の1以内、働いてもらい方改革枠が上限300万円・3分の2以内、中小企業者の働いてもらい方改革枠が上限500万円・2分の1以内
- 小規模事業者の働いてもらい方改革枠では、「新たな働く環境づくり」に要する経費に上限100万円まで補助率10分の10が適用された
- 申請できる枠は1つのみ。申請後の変更はできず、同一事業者の申請は1件まで
- 岐阜県外の店舗等に係る経費は対象外。設置場所・工事場所で判断される
- 申請は商工会・商工会議所を経由。伴走支援は要件であり、数日から数週間を要する場合がある
- 令和8年度の公募は2026年5月15日で終了し、採択事業者は同年7月10日に公表済み。次回の日程は未定
公募が閉じている今は、慌てて書類を作る時期ではありません。むしろ、自社の「稼ぐ力」をどう強化するかをじっくり言葉にしておける時期です。経営計画の組み立てや、次の公募に向けた進め方でお困りでしたら、お気軽にご相談ください。初回相談は無料です。岐阜県・愛知県を中心に、補助金申請のご相談を承っています。
出典
- 岐阜県「中小・小規模事業者パワーアップ応援補助金」(確認日: 2026-07-27)
- 岐阜県 プレスリリース「令和8年度 中小・小規模事業者パワーアップ応援補助金の募集について」(確認日: 2026-07-27)
- 岐阜県商工会連合会「令和8年度 中小・小規模事業者パワーアップ応援補助金(岐阜県小規模事業者持続化補助金)」(確認日: 2026-07-27)
- 岐阜県商工会連合会「令和8年度 中小・小規模事業者パワーアップ応援補助金 公募要領」(PDF)(確認日: 2026-07-27)
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案への適用を保証するものではありません。制度の内容は改正される場合があります。
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